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ウェルカム小説(フリー)

Ein Willkommen

Ein Willkommen



「おや、酷い顔ですね」

北の地、ここブリッグズが久しぶりの晴天に見舞われた日の朝。
まだ陽も上りかけの時間に奴は当たり前のように起きていて、朝一に嫌なものを見たこの心情などまるで知らず露骨に嫌な顔をした私にそんな事を言った。

相変わらず真っ白な服装だったが一応寒さは感じるのか、昼間は開けっ放しのコートのボタンを掛けその中に首に掛けているマフラーもしっかり入れられている。
帽子を被っているせいで唯でさえ少ない肌面積は首が見えなくなったからか人肌色を極端に減らし、より一層[白]をこの男に感じさせる。
その真っ白なものから真っ黒な髪の束一筋だけが背中へ伸び落ちる様はさながら雪狼の鬣のようだった

「なんだ、早いじゃないか。
 こんな時間に何をしている」

「いえね、陽が昇りそうだったので。
 長年牢獄生活だった私にはなかなか珍しい光景でしょう」

見るからに肉体派でないとわかるその風貌もさることながら男の持つ雰囲気はいつも不可解なものに包まれている。
何処か頼りなさ気に見えるかと思えばいつもその身からは妖しげな威圧感や怖気が立ち上り、背筋を駆け上がっては一瞬の突風のように人の身体を通過して、こちらは何かをしんと植えつけられたかと錯覚すら起こす。
一言で言えば喰えない男な訳だが。
その狡猾な仮面はいつも奥を読ませたいのか、それともその逆なのか、意図のわからない発言をこんな風に繰り返すのだ

牢獄生活が長かった、などと。
自嘲しているのでもないだろうにあえてその表現を使うのは絶対に意図してだろうなと思う。
私がどう返すのか見られている。皮肉か、気を遣うのか、いっそ流してしまうのか。
その一つ一つの選択をこの男は観察しているのではないかと私はいつも思うのだ

「今日は晴れますかね?
 いーい空だ」

駆け上る太陽すらもう受け入れる準備を終えているかのような空はまさに晴天というのに他ならない。
色を生み出す光もまだまばらな時間だというのにもうはっきりとその蒼がわかった。
ここ北の地にも鉛と吸殻色以外の空はあるのだと毎回思い出させてくれる色。白い恐怖さえ美しく見せる色。
たしかに今日はこのまま晴れていってくれそうだ

白に包まれた首を大きく上に逸らし、キンブリーは差込みはじめた朝日に目を細めて薄く笑う。
帽子の影を減らした表情はやはりどうとにも読みぬけなかった。

「……どういう暮らしだったかはともかく、晴れた空くらいは幾らでも知っているだろう。
 空気の乾燥と冷気で澄んで見えているだけでそう大して珍しくは」

「いえいえ、そうではなくて」

私の言葉を微かな笑声で柔く切って、ポケットに入れていたらしい右手がその帽子を顔が伏せるのと同時に押さえる。
癖なのか伏せた目元すら笑っているように見えた。

「知っていますかマイルズ少佐。
 空気中の微量な水分はこれだけの低気温の中では目に映るのもやっとな大きさの氷の結晶を作ります。
 結晶は太陽光を浴びた瞬間解けて蒸気になり、それがまた一瞬で凍って再び結晶となる。
 これをかなりの頻度で繰り返す現象をフラッシュブローとかレオフラッシュというんですがね」

本格的に上がってきた昼の王の顔を真正面から見据えるキンブリーが語るその内容に正直興味は無かったが、あえて黙って聞くそぶりを見せると実に楽しそうにその口元は曲線を生んだ。
再び両の手をコートに収め薄っすらと息の蒸気を零しながら靴にあたるつらら粕も気にせず、キンブリーは冷気の中へ言葉を放り与える。
サングラス越しの私の目に奴の前髪の細い黒だけがはっきりと映った

「まぁ虹の原理に近いものですが、太陽の紫外線がうまく反射すると一瞬強く発色するんですよ。
 澄んだ鮮やかな赤に」

ひゅうと、凍える冷気の風が私の目の前を横切る。
横頬に朝日の薄い色をうけたキンブリーの顔がこちらを真っ直ぐと振り向いていた

「丁度貴方みたいな色でしてね、少佐。」

かつんと鳴る硬い靴の踵。
白に抱き込まれた黒い糸の鬣を靡かせて、薄笑いの口元をした喰えない男は私に向って真っ直ぐ歩みを数える。
遠く光の境界線から急激に強さを増した太陽光の熱がキンブリーとは対照的なこの黒いコートを突き刺していく。
優秀なサングラスだけがその強さに耐えたのか、奴の顔だけは嫌によく見えた


「あなたに見られてるみたいで、たまりませんよ」


そう胸を軽く叩いてすれ違っていったキンブリーは、私の顔を見て実に満足気に笑った










強い瞳が私を見つめている


















ウェルカム小説ということで、基本どなたでもフリーです。
こんなのでよければ変態キンブリーを貰ってやってください(雰囲気ぶち壊し)



 
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